生体磁気分離
について

分離技術は、バイオテクノロジーの中でも最も複雑ですが非常に重要な分野のひとつです。コストパフォーマンスに優れた分離技術は、工業バイオテクノロジーにおける生産や、分子生物学的なルーチン診断手順において重要な要素となります。

磁気粒子分離技術は、バイオサイエンスの分野で幅広い応用が可能なため、ますます重要になっています。マイクロまたはナノ単位の磁性粒子は、磁力によって簡単かつ迅速に分離でき、ターゲットに対して高い親和性を持つ抗体やタンパク質などのバイオアフィンリガンドと組み合わせてに使用できます。

磁気粒子分離の原理は、溶液中の粒子に磁力を作用させることです。シンプルな磁石の塊でも、近くの試験管にある程度の力を加えます。磁石の向きと分離する流体の向きを改良したことで、現在使われている高品質な磁気粒子分離製品が誕生しました。

磁気分離技術の特別な利点は、サンプル容器を素早く簡単に扱えることと、時間のかかる遠心分離の工程を必要とせずに大容量のサンプルを扱えることです。

そのため、磁気粒子分離は、自動測定・分析システムにとって理想的なソリューションとなると思われます。

磁気粒子は、一つまたは複数の磁気コアと、末端官能基を有するポリマー、シリカまたはヒドロキシルアパタイトのコーティング基質から構成されています。

通常、磁気コアは超常磁性または強磁性を有するマグネタイト(Fe3O4)またはマグヘマイト(γFe2O3)から構成されています。

超常磁性とは、熱励起により、単一ドメインの粒子の双極子モーメントがコアで急速に変動し、巨視的時間スケールでは磁気モーメントが存在しない状態のことです。従って、これらの粒子は外から磁場がかけられている時は非磁性ですが、外部の磁場の中では平均磁気モーメントが発生します。

これに対し、強磁性とは粒子が永久的な平均磁気モーメントを持つことを意味します。ここでは、実効的な磁気異方性が大きくなることで、熱的に活性化された核モーメントの動きが抑制されます。

超常磁性粒子の利点は、再懸濁が容易であること、表面積が大きいこと、沈降が遅いこと、懸濁液サンプル中の粒子の分布が均一であることが挙げられます。

いったん磁化されると、粒子は小さな永久磁石のように挙動し、磁気的相互作用によって凝集体や格子を形成します。

強磁性粒子は非常に強い磁気特性を持つため、粘性の高いサンプルであっても外部からの磁力により短時間での分離が可能になります。